本日は棚経の日でした。
※たな-ぎょう【棚経】盂蘭盆会(うらぼんえ)に菩提寺の僧が檀家の仏壇・精霊棚(しょうりょうだな)の前で経を読むこと。 『 講談社カラー版 日本語大辞典 第二版』より
檀家が多いお寺のお坊さんは大変です。
住職さんがいない村のお寺を任されているお坊さんはもっと大変です。
何が大変って、軒数もだけど移動距離がすごいことになります。
うちの村には住職さんがいらっしゃいません。
離れたよその町から、ハイブリッドな車で来てくれます。
ずっとこれを着ているんだろうな、と分かる墨染めの法衣。
お袈裟は元の色はどうだったんでしょう。微妙にクリーム色です。
さっぱりした性格のおじーちゃんで、
うちの家族はみんな、このお坊さんが大好きです。
「こっちの方は八時半から回ってくれるらしい」
と聞いて待っていたら、
九時少し前にいらっしゃいました。
「どーもー。はい、お邪魔しますよ-」
お坊さんの声はすでにガラガラでした。
そりゃそうだ。
お膝元の檀家を巡った後ですから。
スリッパも履かずに(分かっているのでこっちも用意していない)、
廊下をすたすたと歩いてまっすぐ仏壇の前へ。
一刻もムダに出来ません。まだまだ先は長いのです。
さくっと紫色の座布団に着座なさいます。
後ろに私と猫のきゅるさんが控えます。
「それじゃ、勤めさせてもらいますで」
読経が始まります。
…終わりました。
『志』と表書きしたのし袋に入っているのは、取り決め通り千円ぽっきり。
昨今のお車代よりお安いです。
仮に、日ごろの感謝を込めてこっそり一万円札を入れたとしましょう。
確実にあとから九千円の『おつり』が戻ってきます。
お手間をかけさせるだけなので、決してやってはいけません。
「それでは、いただいていきます」
さくさくとお片付けをなさって、次のお宅へ……
「猫ちゃーん。にゃー」
次のお宅へ向かう前に、きゅるさんの頭を撫でてくれました。
「にゃー」
「可愛いなあ。あんたはホントにおとなしいええ子やなー」
良い方です。本当に。
昨日の土砂降りのせいで、今日はとっても蒸し暑い。
どうか、お疲れの出ませんように。