「いったん風を入れてしもたら、もう元には戻らん」
私が畑をはじめたころ、農の達人アキヲさんがぽつりともらした言葉です。
『風を入れる』とは、
耕作を放置すること。一切手を入れずに農地を放置することを意味します。
達人アキヲさんをしても、風を入れた畑があるのです。
そこは人里から離れること300メートル弱。
何件かの畑がごちゃごちゃと入り組んでいるところで、
すぐ脇を大きめの道路が通っています。
私が小学生の頃は一面の田畑だったんですが、ある日どかんと道が通ったんですね。
なぜ耕作をやめたのか。
コンビニを作りたいので、土地を売って欲しい
そういう話を持ちかけられたからです。
コンビニができるなら、今から育てる作物を収穫することはできません。
「あんたの父さんと相談して、風を入れることにしたんやけどなあ」
きっと苦渋の決断だったことでしょう。
て、うちの畑も予定地にかかってたんかい。
結局コンビニはできませんでした。
地主さんのどなたかが、売却に応じられなかったのでしょう。
それで、冒頭のお言葉です。
「風を入れてしもたらな、その畑は元には戻らんのや」
耕せばまた畑は形になるでしょう。
ですが、アキヲさんが丹精込めて作り上げてきた畑と同じ畑にはならないのです。
私は現在、風の入った土地を畑にしようとしています。
ひとつだけでも、実家から一番近いところだけでも何とかしたくて。
だいたいの広さを把握しようと、ネットの『農地ナビ』を開いてみました。
すると、そこは
農地ではありませんでした。
Σ(°▽°;えええー?
私が頭と体をフルに使って耕そうとしていた土地は、
どうやら『雑種地』だったようです。
※在りし日の『畑』。お向かいさんにトラクターで掘り起こしてもらったばかり。
こんな感じでがんばってました。黒い囲いが『風防(ふうぼう)』雑草の侵入を防いでくれます。