12年間、県立の通信制高校に勤めていました。
通信制高校に通っていたご当地アイドルさんが亡くなった事件。
他人事とは思えません。心が痛みます。
ご冥福をお祈りいたします。
それで、タイトルの件なのですが。
ワイドショーで、
『通信制高校から全日制高校へ転校するための費用を……』
という言葉が聞こえた気がするので、簡単に説明しようと思います。
高校に通って、高校卒業の資格をとるためには、ざっくり言って
1.三年間以上在籍すること。
2.74単位以上を習得すること(必履修科目を含む)。
3.卒業までに、必要な特別活動時間数を満たすこと。
以上3つの条件をクリアしなければなりません。
基本的に、全日制高校では3年間で、
それぞれの学校でカリキュラムが組まれています。
定時制・通信制高校は単位制を採用しているところが多いですから、
2と3の条件をクリアすれば3年間で卒業することも可能です。
ただ、転入学(=転校)というのは、全日制高校どうしの間でも難しい。
完全単位制を採用している全日制高校はとても少なく、ほとんどが『学年制』です。
そしてどの教科・科目をいつ学習するか(=カリキュラム)は学校によって異なります。
例】必履修科目『家庭総合』4単位
・A高校=1年生で4単位学習する。
・B高校=2年生で2単位、3年生で2単位学習する。
B高校からA高校に2年生から転校しようとすると、『家庭総合』が学習できません。
『必履修科目』というのは、『絶対に学習しなければいけない科目』です。
つまり、卒業要件が満たせなくなるのです。
全く同じカリキュラムを組んでいる学校を見つけるのは至難の業です。
「偏差値がどうの」とか言い出すとなおさらです。
なんとか卒業要件を満たせる学校を探すしかありません。
【転入学(転校)のしやすさ】
全日制 → 全日制 😔うーん…。
働きながら、子育てしながら、闘病しながら…。
それでも、
「とにかく高校卒業の資格が欲しい!」
という方のためにある高校です。
いじめに遭って集団が怖くなった人、引きこもりになってしまった人も多いです。
全日制高校で『単位を落として卒業できなくなったから』という理由でやってくる生徒さんもいます。
卒業までに、何年かかってもいいんです。
*一定の規定のある学校もあります。
『仕事が忙しくて通信制高校に通えない』
→『じゃあ全日制高校へ』
っていうのは論理的におかしい。
通信制高校も、それぞれの学校で特徴がありますから一概には言えませんが、
仕事が不規則な生徒さんにも対応できるシステムを持っています。
私が勤務していた高校では、
『日曜日は稼ぎ時』という職種もあることを考慮して
*日曜コース
*木曜コース
どちらか、通学しやすいコースを選べるようになっていました。
不公平が出ないよう時間割を同じにして、行事の日程も工夫していました。
さらに、火曜日に補講も行なっていました。
付け加えるならば、通信制には『授業』というものはありません。
登校する日=『スクーリングの日』があって、
先生に教えてもらう『面接時間(=スクーリング)』があります。
しばしば『面接時間』は『授業』と似た講義形式をとりますが別モノです(一応)。
卒業要件の3・『特別活動時間』が満たせない!
というケースもたびたび起こります。
『特別活動』とはホームルーム活動や遠足などの行事のことです。
例】LHR1回=1時間。 修学旅行1泊二日=10時間。 体育祭=5時間 など
※学校によって設定は異なります。
全日制高校では、普通に学校生活を送っていれば、自然に時間数が満たされるので、
ほとんど意識されません。
ゆえに、通信制高校で
「なぜ遠足に行かなければならないのか」
も、理解されにくいのです。
3年間で卒業するなら30時間、4年以上なら40時間の活動が必要です。
他校から単位を持ってやってきて、残り1年という場合は10時間になります。
それが、職場で理解されない。
それを、説明するのも難しい。
そして、卒業が延びる。
…哀しい『通信あるある』です。
つらつらと思い浮かぶままに書いていたら、ずいぶん長くなってしまいました。
少しでも、通信制高校への偏見が減ればいいなと願っています。
あのね、通信制高校は「高校の勉強をしたい!」という人にとっては、
最後のとりでなんだよ。
そして、卒業までにはいくつかハードルがあって、
自分で考えて、自分で乗り越えなきゃいけないんだよ。
《こういうのも書いてみました》ご参考になれば幸いです。