ダイちゃんが拠点にしている離れ屋には、少し前まできちんと管理をする人がいて、
その飼い猫が住んでいた。
急な用事ができたのか、その人は予定より早く違う世界に旅立っていった。
猫はしばらく留まって、十ヶ月が経った頃、その人を追って同じところへ行ってしまった。
離れ屋にある猫玄関は、その猫が使っていたものだ。
先住猫がいるときから、ダイちゃんはその玄関を通って家の中に入っていた。
そうして、ごはんを分けてもらっていた。
人間からごはんをもらうようになっても、ダイちゃんは「にゃあ」が言えなかった。
ノラ生まれノラ育ち。
猫社会の中では「にゃあ」というコトバは必要ないからだ。
『のどゴロゴロ』もできなかった。
ごはんをくれる人間に「しゃあっ」と威嚇の息を吐き
少し機嫌のよいときは、グーグーという音を立てた。
今は「にゃあ」も言えるし、のどを鳴らすこともできる。
ダイちゃんはとてもおしゃべりで、少し甘えんぼうだ。
☆☆☆
家庭菜園と呼ぶには少し広い畑がある。
そこで作物を作ってみた。
かぼちゃ。
じゃがいも。
トマト。
なす。
他にもいろいろ。
初めての経験だ。
成果は期待しない。
たまにうまくいくこともある。
そんなときは、
植物の強さに感謝する。
外で作業をしていると、
ダイちゃんの気配を感じる。
黙って見ていることもあるし、
「ほわぁん」と鳴いて
ここにいるよと主張することもある。
私が気づいて手を振ると、
満足してどこかに行くことも。
構ってほしいときには、
どんどんそばに寄ってくる。
遠慮はしない。
そうすると、ついつい相手をしてしまうので、
仕事が進まない。
※白玉スイカとバターナッツかぼちゃ
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