うなぎは泥の中から自然発生する。
by アリストテレス
それはさておき。
以前、うなぎの話を書きました。
うなぎの家族にスポットを当てた小話のことです。
※こちらをご参照下さい
この記事を書いた翌日に、友人から連絡が来ました。
「うなぎとブランデーって、デンマークではポピュラーな組み合わせらしいよ」
そのような情報をどこで得たのかと尋ねますと、
「アンデルセン関係の論文に書いてあった」
やはりアンデルセンでしたか。
というか、よく見つけましたね。
友よ、あなたは検索エンジンですか。
さっそくグーグルさんで再検索にチャレンジ。
発見いたしましたよ☆(°▽°
「砂丘の物語」
でした。
私が読んだものも、山室静先生の翻訳であると思われます。
さあ、ウェブページをめくりましょう。
私の記憶力が試される…(°~° ドキドキ
……主人公はうなぎではありませんでした。
難破船から救助され、ユルゲンと名づけられた少年でした。
その少年が、うなぎ商人から聞いた話。
話中話(わちゅうわ)。枠話(わくばなし)というやつです。
ユルゲン少年の前に、賢く陽気なうなぎ商人が登場します。
彼はブランデーの樽を持ってやってきて、
うなぎを食べた客に一杯のブランデーをふるまいます。
「これをのむと、あぶらっこいウナギにもあたらないから」
だそうです。
そして、毎回同じ話を語るのです。
さくっとその部分をご紹介いたします。
「 」の中のうなぎのセリフは、原文を引用いたしました。
☆うなぎ商人の話:あらすじ☆
川に母うなぎと8人の娘がいました。
ある日、娘たちが、自分たちだけで上流の方に行ってみたいと言い出します。
そこで母うなぎが娘たちに注意しました。
「あんまり遠くへ行くんではありませんよ。でないと、わるいうなぎとりがやってきて、おまえたちをみんなつかまえてしまうからね!」
案の定、娘たちは母のことばにしたがわず、遠くまで行ってしまいます。
無事に帰ってこれたのは3人だけでした。
娘たちは泣きながら、他の5人に降りかかった災難を語ります。
「わたしたちが戸口からすこし出たと思うと、わるいうなぎとりがやってきて、五人のねえさんをつきさしてしまったの!」
母うなぎがなぐさめます。
「いいよ、いまにかえってくるから」
うなぎとりは、ねえさんうなぎたちの、皮をはぎ、小さく切り、焼いてしまいます。
母うなぎは言います。
「きっといまにかえってきますよ」
食べられてしまったと聞いても、
「なあに、きっとかえってきますとも」
ところが最後に娘たちが
「でも、そのあとでブランデーをのんだわ!」
と言うと、母うなぎは
「やれ、やれ。それじゃ、もうかえってきやしないよ! ブランデーをのまされちゃ、ウナギはおだぶつだもの」
そう言って泣いたのでした。
・・・・・・・・・
とまあ、こんな感じです。
いろいろと記憶違いはありますね。
〇十年も昔のことですから仕方ありません。
漁師に捕まったのは父うなぎではなく、娘うなぎ。
親の言うことを聞かずに大変な目に遭い、
「戸口からすこし出たところで捕まった」と、ちょろりと自己弁護。
とても人間くさいうなぎです。
で、私がはっとしたのは
おだぶつ!(°△°
そう、『おだぶつ』。
『昇天』でも『成仏』でもありません。
*御陀仏(おだぶつ):死ぬこと。だめになること。
こども向けの翻訳に、燦然と輝くこのワード。
山室静先生、渋いチョイスです。
話を童話に戻しましょう。
アンデルセンはうなぎ商人の語りが締めくくられると、このように続けます。
この話が、ユルゲンの一生をつらぬいてかがやくほがらかさの、金の糸になったのです。かれもまた、戸口に出て「川をすこしばかりのぼりたく」なりました。というのは、船で広い世間へ乗り出してみたくなったのです。
うおーい、ユルゲン!
どこ行くねーん!\(°△°;
この続きはあなたの心の中で……。
ではなくて、ユルゲン少年の来し方行く末を、ぜひ見届けてください。
私も、これからもう一度読み返そうと思います。
しかしなぜ、このうなぎの話だけピンポイントで覚えていたのでしょう。
これもアンデルセンのいう『金の糸』なのでしょうか。
それとも『おだぶつ』のインパクトかなあ。
※大畑末吉先生の翻訳もあります。