やれることだけやってみる

マイナスからの畑作り。草と戦い、疲れたら猫といっしょに昼寝をします。

うなぎとブランデーとアンデルセン

うなぎは泥の中から自然発生する。

 by アリストテレス

f:id:kaedeya:20210722175552p:plain

 

それはさておき。

以前、うなぎの話を書きました。

うなぎの家族にスポットを当てた小話のことです。

 

※こちらをご参照下さい

kaedeya.hatenablog.com

 

この記事を書いた翌日に、友人から連絡が来ました。

「うなぎとブランデーって、デンマークではポピュラーな組み合わせらしいよ」

そのような情報をどこで得たのかと尋ねますと、

アンデルセン関係の論文に書いてあった」

やはりアンデルセンでしたか。

というか、よく見つけましたね。

友よ、あなたは検索エンジンですか。

さっそくグーグルさんで再検索にチャレンジ。

 

発見いたしましたよ☆(°▽°

books.google.co.jp

 

ハンス・クリスチャン・アンデルセン

砂丘の物語」

でした。

私が読んだものも、山室静先生の翻訳であると思われます。

さあ、ウェブページをめくりましょう。

私の記憶力が試される…(°~° ドキドキ

 

……主人公はうなぎではありませんでした。

難破船から救助され、ユルゲンと名づけられた少年でした。

その少年が、うなぎ商人から聞いた話。

話中話(わちゅうわ)。枠話(わくばなし)というやつです。

 

ユルゲン少年の前に、賢く陽気なうなぎ商人が登場します。

彼はブランデーの樽を持ってやってきて、

うなぎを食べた客に一杯のブランデーをふるまいます。

「これをのむと、あぶらっこいウナギにもあたらないから」

だそうです。

そして、毎回同じ話を語るのです。

さくっとその部分をご紹介いたします。

「  」の中のうなぎのセリフは、原文を引用いたしました。

 

☆うなぎ商人の話:あらすじ☆

川に母うなぎと8人の娘がいました。

ある日、娘たちが、自分たちだけで上流の方に行ってみたいと言い出します。

そこで母うなぎが娘たちに注意しました。

「あんまり遠くへ行くんではありませんよ。でないと、わるいうなぎとりがやってきて、おまえたちをみんなつかまえてしまうからね!」

案の定、娘たちは母のことばにしたがわず、遠くまで行ってしまいます。

無事に帰ってこれたのは3人だけでした。

娘たちは泣きながら、他の5人に降りかかった災難を語ります。

「わたしたちが戸口からすこし出たと思うと、わるいうなぎとりがやってきて、五人のねえさんをつきさしてしまったの!」

母うなぎがなぐさめます。

「いいよ、いまにかえってくるから」

うなぎとりは、ねえさんうなぎたちの、皮をはぎ、小さく切り、焼いてしまいます。

母うなぎは言います。

「きっといまにかえってきますよ」

食べられてしまったと聞いても、

「なあに、きっとかえってきますとも」

ところが最後に娘たちが

「でも、そのあとでブランデーをのんだわ!」

と言うと、母うなぎは

「やれ、やれ。それじゃ、もうかえってきやしないよ! ブランデーをのまされちゃ、ウナギはおだぶつだもの」

そう言って泣いたのでした。

・・・・・・・・・

 

とまあ、こんな感じです。

いろいろと記憶違いはありますね。

〇十年も昔のことですから仕方ありません。

 

漁師に捕まったのは父うなぎではなく、娘うなぎ。

親の言うことを聞かずに大変な目に遭い、

「戸口からすこし出たところで捕まった」と、ちょろりと自己弁護。

とても人間くさいうなぎです。

で、私がはっとしたのは

 

おだぶつ!(°△°

 

そう、『おだぶつ』。

『昇天』でも『成仏』でもありません。

*御陀仏(おだぶつ):死ぬこと。だめになること。

こども向けの翻訳に、燦然と輝くこのワード。

山室静先生、渋いチョイスです。

 

話を童話に戻しましょう。

アンデルセンはうなぎ商人の語りが締めくくられると、このように続けます。

この話が、ユルゲンの一生をつらぬいてかがやくほがらかさの、金の糸になったのです。かれもまた、戸口に出て「川をすこしばかりのぼりたく」なりました。というのは、船で広い世間へ乗り出してみたくなったのです。

 うおーい、ユルゲン!

どこ行くねーん!\(°△°;

この続きはあなたの心の中で……。

ではなくて、ユルゲン少年の来し方行く末を、ぜひ見届けてください。

私も、これからもう一度読み返そうと思います。

 

しかしなぜ、このうなぎの話だけピンポイントで覚えていたのでしょう。

これもアンデルセンのいう『金の糸』なのでしょうか。

それとも『おだぶつ』のインパクトかなあ。

f:id:kaedeya:20210724205155j:plain



 ※大畑末吉先生の翻訳もあります。