ねこ森町の2丁目には、ねこ神社があります。
神社には羽巣手戸さまがお祀りされています。
猫の神様です。
ねこ森町の猫たちは、みんな羽巣手戸さまが大好きです。
獲物をお供えしたり、困ったときは相談します。
羽巣手戸さまにご用があるときは、
お社ちかくの松の木の枝に、用件を書いた紙を結びつけます。
すると羽巣手戸さまが夢に出てきてくれます。
お礼は松の木の根元に置きます。
そんなわけで、その木は「ご用の松」と呼ばれているのです。

今年も冬至の日がやってきました。
落葉樹が葉を落とし、ねこ神社の境内は赤い絨毯を敷いたよう。
おとなの猫たちは前日から神社に集合。
境内を掃き清め、集めた落ち葉で焚き火をしました。
焚き火ときたら、これです。
「林間に~酒を煖(あたた)めて紅葉を焼(た)く~」
亀宿禰(かめのすくね)じいちゃんがいい声で歌っています。
宿禰じいちゃんは風流なのです。はっきょい。
またたび酒をぬるめの燗にして。
冬紅葉に盃を掲げて、一献一献、また一献。
「おお、見事な満月が」
「おじいちゃん、あれはColemanのハンギングライトよ」
小さな焚き火を囲み、ちびりちびりと余は更けて。
みんな、いい感じに出来上がってまいりました。
本番、ねこ森町こぞっての冬至祭は明日です。
昼過ぎから大きな焚き火をぼんぼこぼん。
弱った太陽を励まし、復活を祈ります。
焚き火を囲んでぐるぐる踊り、
夕焼けを残して沈んでゆく太陽を見送ったら
運気の上がる食べ物をいただきます。
縁起がよいのは『ん』が二つつくもの。
うどん(饂飩=うんどん)などがよろしいのです。
「今年のお汁は何味かしら」
「ふふふ、チキンコンソメですよ」
おっと、お汁にも『ん』が二つ。
運気爆上がりまちがいなしですね。
きっとちびっ子たちも大喜びすることでしょう。
日付が変わり、空気はキンと冷えて。
「そろそろ明日に備えて寝ましょうかね」
境内のあちこちに張ったテントにごーそごそ。
酔っぱらい猫たちは自分の寝床で眠ったのでした。
☆☆☆
猫たちの朝は早い。
「うー、さむさむ」
またたび酒の残る頭を抱え、白い息を吐きながら。
猫たちがごそごそとテントから起き出しました。
お寝坊な朝日は地平線の下から光でアピール。
そろそろ子どもたちが来る時間です。
二日後はクリスマス。
子どもたちはツリーの飾りつけをするのです。
飾りつけをするのは境内にある『ご用の松』。
なかなか枝ぶりのよいご長寿の松はご神木。
登ることを許される機会はめったにありません。
松に登るのも、みんなのお楽しみのひとつなのです。
「念のため、梯子と踏み台を用意しましょうかね」
よれよれと動き出すおとな猫と宿禰じいちゃん。
松を見上げて首をかしげ、目をこすります。
「はて?」
一本しかないはずのご用の松が三本に見えます。
まだ酔いが残っているのでしょうか。
目をこすり、顔を洗い、全身をきれいきれい。
それでも松は減りません。やっぱり三本。
これは一体どうしたことでしょう。
みんなで首をひねっていると、にぎやかな声が。
「おはよー」
きゃいきゃいと子ども猫たちがやってきました。
「あれー。へんなのー」
「松が増えてるー」
幻でも、お酒のせいでもありません。
松は本当に増えているようです。
宿禰じいちゃんは「ははーん」と思い当たりました。
先日、ひっそり沼で聞いたはかりごと。
羽巣手戸さまもご承知の上の悪ふざけ。
正体はお察しです。
宿禰じいちゃんの「ははーん」な顔。
その表情を見逃さなかった猫がふたり。
あらゆるいたずらを見たきたものたち。
育児経験豊富な手練れです。
三本の松のうち、二本は偽物。
しかも正体は宿禰じいちゃんもよく知る者。
そうして羽巣手戸さまのご神木『ご用の松』。
許しもなく化けることはできません。
ならば、
「三本あるなら、願いも三倍叶うってことだ」
陸山母さんが不敵な笑みを浮かべました。
隣でマオさんも頷いています。
「子どもたち、存分に飾っておあげなさい」
わー、きゃー。わらわらわらわら。
ご用の松、付近一帯が無法地帯になりました。
ガシガシ、びよよん。やっほーい。
「うひゃひゃ、こりゃたまらん」
松が一本、くねり、と身をよじりました。
さらにもう一本が、くねり。
「爪が、爪が食い込んで。痛いですー」
ぽぽん、ぽん。
変化(へんげ)が解けて、偽松が消え
「うーむ、術は完ぺきだったはずじゃが」
「さぷらいず返しされちゃいましたねえ」
蛇麻呂(へみまろ)と鯉太郎が正体を現わしました。
「あ、へみさん」
「こいたろうくんだー」
子どもたちは大喜び。いっそう二人にじゃれつきます。
羽巣手戸さまもご同罪。
「そちらはよろしくお任せしますよ」
母さん猫たちに子守りとツリーを託されました。
みんなでわいわい冬至の宴。
薪を組んで火を燃やして、歌って踊って。
太陽よ、元気になあれ。
みんなに明るい年がやってきますように。
☆本物は真ん中の松でした。

・・・・・
※陸山母さんのお宅
※マオさんのお宅
※うちの猫たちの冬至メニュー。

お湯で溶いたバターナッツ南瓜のペースト。
そこにウェットフードをまぜまぜ。
^・△・^ なにこれ、うまー!

クロが大興奮でした。
^・ω・^ これがうわさのコールマン。
もしもアフィリエイト利用中。