ほとんどの人間は知りません。
「暗黒森林」ともいわれるこの宇宙。
とっくの昔から知的生命体の交流が行なわれているのです。
『生命体』は『精神体』と言い換えてもいいですし。
惑星そのものでもあります。
お互いの存在を認め、高め合う組織もございます。
全宇宙惑星親睦会
これがその組織の名称です。
親睦会の一員であり続けるためには審査があります。
監査官により綿密な調査が行なわれ、データが審査されます。
審査会議で『不適格』との判定が下されれば資格剥奪。
宇宙のぼっちとなってしまうのです。
昨年末、地球にも監査が入りました。
監査官は彗星に擬態して太陽系内に侵入。
目に映るすべてを審査会場に送り届けました。
監査官の地球名は、『3I/ATLAS』。
正体は青白く光る尾を持つ天狐(あまぎつね)です。

* * *
年が明け、ひと月が経とうとするころ。
審査会からの結果が地球に届けられました。
地球で採取した土と水で作った粘土板に刻まれています。
なるほど、惑星の環境に対する配慮ですね。
粘土板は回覧袋に入れられ、神さまの間を回ります。
ねこ森町のねこ神社にもやってきましたよ。
羽巣手戸さまが丁寧に内容を確認なさいます。
ちきうの評価はどうなったかな。

☆生命保護システム:正常(磁場・大気等)
☆水陸バランス:良好。
☆気候変動:許容範囲。
☆次元の浸透膜:要点検箇所あり
☆生命活動:偏りはあるも活発。
☆知的生命種:複数確認。
☆成熟度:これからに期待。
☆総合評価:合格。
☆審査員たちの所感:
なんだかださい・雰囲気がもっさりしている。
シャキッと感が足りない。
合格してよかった…。

ふう、と羽巣手戸さまは息をつきました。
宇宙にはヘンテコで個性的な惑星がたくさんあります。
それに慣れている審査員にとって地球などは平凡な星。
この結果はまあ、妥当な線と言えましょう。
次元の膜については猫たちが通る道でもあります。
これはおいおい修理してゆけば…。
納得いかーん!

なんですかあの所感は。
このちきうが、わたしどものちきうが
ださいとかもっさりしているとか。
誰の口がそんなこと言うてますねん。
ああ、惑星審査員ですねそうでしたね。
会議中に知能回路がレム睡眠していたのでしょう。
さもなくばアマギツネのレンズが曇っていたのです。
そうに違いありません。むっきー。
羽巣手戸さま、大激怒。
いけません、このままでは粘土板が粉々に……。
^・_・^; 次の神さまに回してくる!

間一髪、回覧板は守られました。
しかし羽巣手戸さまの怒りは収まりません。
憤懣やる方なし。ぷんすかぷんすか。
見る目のないものどもよ。
へっぽこ監査官よ。
おととい来やがれなさい。
みなのもの、塩を持て!
残念ながら塩のストックはありません。
お正月の相撲大会で使ってしまいました。
今あるのは、節分祭に使う大豆くらいです。
係の猫たちが丹精込めて炒り豆にしています。
ちょうど香ばしい匂いが立ち込めてきたところで
ああっ、羽巣手戸さま! ご無体な!
とりゃあっ、爆裂大豆波動砲!

羽巣手戸さまの必殺技が炸裂しました。
あああ、節分用の豆が。
光速を超えて宇宙にばら撒かれてしまいました。
猫、ドン引き。
ごめん。

節分を前に太陽系はすっきり。
ヘリオポーズ*の内側がきれいに清められました。
地球のシャキッと感も大幅に増大。
羽巣手戸さまも正気に戻られたようですよ。
これからみんなでお片づけです。
もちろん節分祭は例年通り行なわれます。
大豆は炒り直しですけれどもね。
福は~うち。
* * *
^ーωー^ いや~大変でしたわ。
^・_・^; だれ?

*ヘリオポーズ:太陽圏の最外境界線。太陽風がせき止められる場所。

