キジには悩みがある。
家の外にも自由に出られる田舎猫で、ナワバリも持っている。
猫としては申し分の無い恵まれた境遇だ。
しかしキジはインドア派、オウチスキー。
お家の中で過ごすのが大好きなのである。
ところが近頃、憂慮すべき事態が起きている。
おうちの中にいてもどうも落ち着かぬのだ。
元凶はこやつである。
白っぽいサバ猫、新入りのペソ。
平時の猫はまったりとしていなければならぬ。
いざという時に備え、体力を温存するためである。
しかるに彼は多動である。
^ーωー^ キジ兄のそば~。
やたらとキジのそばに来る。
頭突きスリスリもする。
たまにじゃれついてきたりもする。
親愛の情も行き過ぎると逆効果なのである。
キジだけではない。
サバにすりよろうとして逃げられ、
クロに甘えようとして怒られ、
それでもペソは距離を縮めようとする。
もちろん、努力は認めないでもない。
時と場合とこちらの気分を読み取ってさえくれれば。
うちの仲間として受け入れるのもやぶさかではない。
やつの構って攻撃を避けるため、
^・_・^ お向かいさんちに行く。
^・_・^ ナワバリの拡張に行く。
サバとクロは安寧の地を求めて外に出る。
おうちを完全に留守にするわけにはゆかぬ。
畢竟、キジがやつの相手をすることになるのだ。
ああ、段差。
大好きな段差を味わっていても足音が近づいてくる。
てとてとてと。
来る。やつがこっちに来る。
避難。
いきなり飛びかかられるやもしれぬ。
ペソはまだ爪の出し入れ加減が下手くそ。
すでにキジの体はかさぶたがいっぱいなのだ。
自分の身は自分で守らねば。
どこかによい居場所はないか。
寝心地が良く、ペソに邪魔されないねぐら。
『どんと、でぃすたーぶ』の意思が伝わる場所。
そういう都合のよい居場所がないものか。
はっ、ひらめいた!
そういう場所がないのなら、自分で作ればよいのだ。
キジってば、あったまいい~。
ここに猫ベッドと意味不明のカゴがあるじゃろ?
角度をちょいちょいと変えますれば……。
ほうら、できた。
床の色とキジの色、窓から差す光と影がほどよくマッチ。
いい感じ、まことにいい感じなのである。
キジの見立てによればペソはあまり鼻がよくない。
音さえ立てなければ気づかれることはなかろう。
気づいてもこの壁があればキジの意図はくみ取れるはずだ。
だから人間よ。
キジがここにいるときは、あまり覗かないでほしい。