どんぶら川の上流にはざあざあ滝があって。
滝の上には桃の園があります。
そこで華やかな宴が開かれたのは三月。
桃の節句のことでした。
あれからそろそろ二か月。
桃の花は散り、緑が濃い影を落としています。
晴れた空を見上げながらてくてく歩くと、

大きな藤に出会います。
風が吹くたび、花房がふわふわ。
甘い香りがほわんと漂ってきます。
しかし、お気をつけくださいね。
花に見とれて足元をおろそかにしてはなりません。
この藤はひっそり沼のそばにあるのです。

沼には主が住んでいます。
その名も亀宿禰(かめのすくね)。
古墳時代から生きているのではと噂される亀です。
うっかり足をすべらせて、沼ぽっちゃん。
甲羅干しの邪魔などしたらたいへん。
宿禰じいちゃんにしこたま𠮟られ説教されます。
老人の話は長いのです。

沼のほとりは静かです。
藤の花ふわふわ、日差しはぽかぽか。
たまに水音、水鳥の羽ばたき。
風がざあっと吹き抜けてゆきます。

いつの間にか、うっかり猫はうとうと。
宿禰じいちゃんもうとうと。
藤の花がふたりの眠りを見守ります。

藤の花の花言葉は『優しさ』『歓迎』。
ひっそり沼のそばでお客さまを待っています。
もうすぐ五月節供。
お魚が龍になる日。
賑やかな宴の日が近づいてきましたよ。
楽しみですね。
撮影:2025.4.27

