南天の実が赤くなった。
遅い冬がやってくる。
昨夜はパラパラと雨が降った。
午後からも雨の予報だ。
^・ω・^ はたけ、行く?
もってりと太ったダイちゃん。
すっかり冬支度完了ですか。
では、いっしょに行きましょう。
青い空が見えている間に。
みなさまにおかれましてはしばし、
問わず語りにおつきあいください。
今回のBGM:志方あきこさん『遙かなる旅路』
先々週の土曜日。
母の元同僚という方が、お参りに来てくれた。
「そろそろ二十七回忌ですね」
驚いた。
目の前の女性は母より少し年下に見えた。
母は体が弱かった。
その分、根性は他人の10倍くらい強かった。
そうでなかったら、私はこの世にいない。
しっかり働いて、私が社会人になったのを見届けて退職。
それから2年後に旅立った。
「農家に嫁いでご苦労もあったでしょうに」
編み物、裁縫、ウクレレ、ギター、書。
何にでも興味を持ち、新しい世界に飛び込んでいく。
そういう人だった。
よく畑の草取りをしていた、と
近所の人から聞いたのはついこの間だ。
夏野菜の世話をしているのを見たことはある。
しかし、そんなにしょっちゅう畑仕事をしていたとは知らなかった。
※萩の茂みにチビたん。
「アパートで独り暮らしをしたい」
生前、母はそんなことを言っていた。
さまざまなことにチャレンジしても、
まだまだ自由が足りなかったのだろう。
大学時代の2年間。
私はアパート住まいをした。
研究やら論文やらが忙しくなったためだ。
そのアパートは、静かな、
しっとりと古びた趣のある街にあった。
それでいて、一歩大通りに出れば、
若者にはうれしい、流行の先端をゆく店が
ずらっと並んでいた。
古本屋があり、ジェラートの店があり。
文句のつけようがない住環境だった。
しかし、どうにも腰が据わらず
月に3度は実家に戻った。
「下宿の意味がない」
と、母には笑われたけれど。
私が社会人になるのを見届けて、
2年後に母は旅立った。
引き出しから、
『女ひとり旅』
と表書きされた封筒が見つかった。
みんなで笑って、少し泣いた。
※アジサイの剪定、完了!
今現在、住まいはアパートだ。
住み始めてもう25年くらいになる。
ここも最初のうちは違和感があった。
『自宅』なのになぜか落ち着かない。
ややあって、理由に思い至った。
「ここには土がない」
決して都会ではない。
けれど、それまで当たり前にあったものが
すっぽりと生活から抜け落ちていた。
冬に、山から直接吹きつける冷たい風。
春先、耕されたばかりの新しい土の香り。
初夏、田んぼから聞こえる蛙の合唱。
秋の賑やかさ。野焼きのにおい。
実家には庭があって、土があった。
アパートには庭はないがベランダがある。
冬の寒い夜にも、ベランダに出て
空を眺めるようになった。
視力がよくないので、星は見づらい。
月の満ち欠けを気にとめるようになった。
何年か経ったころ、心と体を病んだ。
原因?
心当たりはあるが、どうでもいいことだ。
仕事に差し支えるようになった。
それが苦痛だった。
症状は悪化した。
独り暮らしの父も長患いで、
体調が思わしくない。
仕事を辞めることにした。
※地面に何かいるらしい。
父を見送った後も、
毎日実家に通っている。
心も体も、少しずつだけれど
快復しつつある。
もう少し、ここで。
ゆっくりと休んで。
それから、
次のことを考えよう。
遮るもののない空を仰いで、
むき出しの地面を踏んで。
※ウィンターコスモス。星のよう。
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