◇NNN(ねこねこネットワーク)とは
猫の猫による猫のための組織。『すべての猫はしあわせに暮らす権利を持つ』という理念のもと、日夜活動をおこなっている。
主な活動内容としては、
*人間の生息区域を巡回し、住人とその住環境を観察する。
*猫が快適に暮らせる物件を探す。
*保護を必要とする猫を人間のもとに送り込む。
*猫を必要とする人間のもとに適任猫を派遣する。
など、多岐にわたる。
現地調査は主にノラ猫が行なうが、外飼い猫が担当することもある。各地から集まった情報は本部【所在地:ねこ森町(?)】で精査されているらしい。
NNN(ねこねこネットワーク)というのは日本における呼称であり、人間が名付けたもの。他にさまざまな名が存在する。
*例:CDS(Cat Distribution System)
猫自身が組織をどう呼んでいるかは謎であるが、地球規模の組織であることは確実であり、人間がその全容を計り知ることはできないと言われている。
◇*◇*◇
いっぴきのノラ猫がいる。名前はない。
彼は現在とある小さな家屋を調査している。
この物件は彼の前任者であるダイダイ調査員が開拓したものである。
数年前、ダイダイ調査員はここに母猫2ひきと子猫たちを誘導。4ひきの子猫が望まれて他所へと引っ越し、3ひきが残った。
*キジ(♂)・サバ(♀)・クロ(♂)
みんなもう立派なおとなである。
ダイダイ調査員はこの功績により本部へと引き抜かれ、同期であった彼が後を引き継いだのだが、さて、今この物件の価値はどうであろうか。
朝、隣の建物から人間が出てくる。彼の姿を認めると
°▽°)おはよう。
と声をかける。彼もあいさつを返す。
^ーωー^ にゃー。
これは対人間用言語である。猫同士の会話では使わない音声であり、例えれば奈良シカのぺこりと同じようなものである。
調査続行。
家屋内の環境はどうであろうか。
猫用玄関から侵入。中の様子を観察する。
すぐ追い出されることはないし、居心地は悪くなさそうだ。
どうやら3猫は食事中。
そうっと覗きに行くと、さっきの人間が彼の方を振り返った。
°▽°)エサたべる?
悪くない。
しかし彼は知っている。猫のごはんを管理しているのはよそから来る人間なのだ。
回れ右。次の物件の調査に向かう。ごはんをくれる家はここだけではない。
別の日、例の人間が現れた。
この人間の懐具合はいかがであろうか。他の猫を養う余裕はあるのだろうか。それにより、この物件の価値が決まる。
「優良物件」になるか。それとも「避難所」扱いか。
今日もいるんかい(°_°
彼の姿を見た人間は、そう言ってすぐに去ってしまった。しばし待つことにする。
3猫のはしゃぐ声がする。
すでに食事は終わり、おやつをもらっているようだ。おちゅ~るであろう。
何ヶ月も通い続けてきたが、あの人間は彼に何もくれなかった。やはり3ひきが限界か。これ以上の食の提供を期待するのは難しそうだ。
彼がこの事情を報告すれば、かつて「優良物件」であったこの家は、おそらく「避難所」に格下げとなる……。
あれ?
一体これはどういう風の吹き回しであろう。人間同士で何か話し合いが行われたのだろうか。
人間が差し出してくる食料が安全なものかどうかを確かめるのも、調査員の仕事である。ある意味命がけ。担当区域に危険な人間がいたら必ず報告。近隣の猫たちの安全を守らねばならない。
もぐもぐ。
悪くない。
調査完了。調査員はありのままを本部に報告する。判定結果はねこねこ情報誌に掲載される。結果次第では近隣地域から問い合わせがくるかもしれない。
※ねこねこ情報誌「にゃ・むー」(監修:NNN)
ごちそうさま。
彼は巡る。新たなる優良物件を求めて。
この地に生きる猫たちのしあわせのために。
・・・・orz
※ダイダイ情報員の記録
※ねこ森町