やれることだけやってみる

マイナスからの畑作り。草と戦い、疲れたら猫といっしょに昼寝をします。

【実話怪談】ヤギ

ある日の朝。

猫たちにごはんを差し上げようとキッチンに入りますと、

 

^・_・^ バリバリベッドが汚い。

サバが怒っていました。

紙くずだらけのベッドは使いたくないそうです。

自分がやったんでしょうに。

あちこち抜け毛まみれですし、ごはんが済んだらお掃除しましょう。

お掃除をしつつ、暑気払いに怖い話などどうですか。

私の体験談ですよ。

 

^ーωー^ 聞かせてもらいましょう。

 

・・・・・

社会人になって半年くらい経ったころのお話です。

赴任先が少々遠い場所にありまして。

車で片道一時間ほどかけて通勤しておりました。

山越え谷越え町を越え。

早起きがちょっぴりつらい毎日でした。

 

夏が過ぎ、紅葉まではまだ間がある秋の初め。

いつものようにほぼ定時で帰路につきました。

小さな集落を通り抜け、最後の山越え道へ。

山とはいってもそんな大層なものではありません。

小高い里山の連なりです

その間を縫うようにくねくね細い道がついています。

 

ほんのり夕暮れのなごりが残るたそがれ時。

木々がやわらかな藍色に沈んでゆこうとしています。

ここまで来れば家まではあと少し。

ほっとひと息つきまして。

緩みがちになる気持ちを引き締め直します。

 

左手にはごそごそ藪に続くなだらかな斜面。

右側は谷。こちらも藪に覆われて底は見えません。

前後に車はおらず、対向車もなし。

とても静かです。

聞こえるのは私の車のエンジン音ばかり。

 

アクセルをぐんと踏んで坂を上りかけたとき。

谷の方から霧が流れてくるのに気づきました。

視界が悪くなるほどではありませんが要注意。

私は踏み込んだアクセルを緩めました。

エンジンの音が小さくなります。

すると…

・・・・・

 

^≧△≦^ ぎゃーこわい。

ぎゃー暑い。

キジさんや、なぜそんな隙間に潜り込む。

^・△・^; こわいから。 

いや、まだ怖くないでしょうが。

ぶち壊しですがな。

いいですか、続けますよ。

 

・・・・・

すると、車外からかすかに音が聞こえてきたのです。

 

ちりん…ちりん……。

 

鈴の音に似ています。熊よけかな。

誰か山道を歩く人がいるのかもしれません。

まだ宵の口にもならない時間ですからね。

さらに車のスピードを落として徐行。

霧が少し濃くなった気がします。

 

ちりん、からん、ちりんちりん……。

 

音が近づいてきます。しかも複数。

私は車を止め、谷の方に顔を向けました。

 

ちりりん、からんからん。

 

白い霧とともに、谷を上ってくる白い集団。

ーーそれは

 

ヤギの群れ。

音の正体はヤギの首につけた鈴でした。

放牧から帰る途中でしょうか。

10頭ほどはいたと思います。

人の姿はありません。

自分たちで帰れるとはなんてお利口なんでしょう。

ヤギは右から左へと軽やかに道を横断し、

木々の間に消えてゆきました。

 

ヤギたちの後ろ姿を見送り、後続がいないのを確認。

ブレーキにかけた右足をアクセルへと踏み換えます。

それからごとごと20分。

私は無事帰宅して、晩ご飯を食べたのでした。

・・・・・

 

^・_・^ ……で?

それでおしまいです。

 

^ー_ー^ こわくなかった。

はい。

でもね、これは平成のお話です。

普通の農村ですよ。

ヤギを集団で飼っているお宅があるでしょうか。

しかもヤギが勝手に山の中を歩き回るって……。

私が我に返ったのは車を再発進させてすぐでした。

 

アルプスか! \(°△°

 

思わず声に出してツッコんでしまいましたよ。

 

夢ではなかったと思います。

居眠り運転をする時間ではありませんでした。

 

それから3年ほど、何度もその場所を通りました。

けれどヤギに遭遇したのは一度きりです。

そういや鳴き声は聞こえたっけ。

足音は?

動物集団特有のざわめきはあった気がするんですが。

 

どんどん記憶が薄れております。

忘れる前にしたためてみました。

 

^・ω・^ はい、おそまつさま。