日本の片隅の、とっても田舎な村のさらに端っこで、ダイちゃんは暮らしている。
《猫の行動範囲は半径1キロメートル》
と、ずっと前に聞いたような記憶があるけれど、実際にはもっと広いらしい。
地図の上に円を描いてみると、村がすっぽり入る。
それ以上になれば、となりの集落まで。
まさか山越えはしていないだろうと思うけれど、
そのへんは本猫に聞いてみないと分からない。
道祖神さま。
羅漢さま。
だいだい色のオス猫を見かけませんでしたか?
この道を通って向こうの方へ行きませんでしたか?
☆☆☆
普段は住む人のない離れ屋が
ダイちゃんの拠点だ。
ごはんを食べ終わると、
ふらりと出てゆく、
雨が降ろうと。
風が吹こうと。
ダイちゃんは外回りを欠かさない。
ところで、少し気になることがある。
ダイちゃんや。
うちでごはんを食べるようになってから、
かなり太ったな。
☆☆☆
日向で身づくろいをしている途中、
ふと動きを止めてどこかを見ている。
それとも、
何か考え込んでいるのかな。
―― 今日はどこから回ろうか。
人間が作った道だけが道ではない。
たまに、重なることもあるけれど。
歩きたいところが猫の道だ。
足の裏は大丈夫なのだろうか。
たまに心配になる。
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