子猫たちは成猫用のカリカリをもりもり食べる。
生まれたときからここに住んでいるような馴染みっぷり。
すっかり離れ屋を乗っ取ってしまった。
みんなダイちゃんに懐いている。
ダイちゃんにもたれて眠ったり、しっぽで遊んだりする。
《イクメン猫》
自分の子を、他のオスによる《子殺し》から守る。
そういうオス猫もいるらしい。
ご近所の方が、大きな黒っぽい猫とケンカしていた、と教えてくれた。
ダイちゃんは、身を挺して家族を守っている。
安全な場所を提供し、外敵と戦っている。
立派な《イクメン猫》だ。
しかし、このままでは。
もし、ダイちゃんのガールフレンドが子離れしたら。
また子どもを産んだら。
確実に、ここに連れてくる。
その子たちは、確実にダイちゃんの子ではない。
そうなったら、ダイちゃんはどうするだろう。
☆☆☆
白い子猫たちが、家族を手に入れた。
おそらくブチさんの子だ。
同じお母さんから生まれて、
同じお家に引き取られていった。
今もいっしょに幸せに暮らしている。
しかし、どこからどう見ても…、
ダイちゃんの実子ではない。
☆☆☆
獣医さんが捕獲器を貸してくれた。
猫玄関を塞いだ。
年代物のごつくて重い捕獲器は、私の手には負えなかった。
ダンボールをガムテープで貼り付けただけのバリアは、すぐダイちゃんに破られた。
猫玄関に板を打ち付けてくれたもの、捕獲器もセットしてくれたのもご近所の方だ。
ありがたかった。
何度もエサを取られ、やっとブチさんが捕まった。
「白っぽい方がかかったよ」
連絡があったのは夜十時を過ぎたころだった。
食いついたエサは、カマボコ。
区長さんの晩酌のお供だった。
ブチさんは避妊手術を受けたあとも、二度、捕獲器にかかった。
変な箱に閉じ込められても無事に出てくるブチさんを見て、
チビたんの警戒心が食欲に負けた。
二匹の猫が入った重い捕獲器を、お隣さんが車のトランクに積み込んでくれた。
捕獲器を覗き込んだ女医さんが、ブチさんに話しかけた。
「あら~、また来たの?」
避妊手術をした印に、
左耳に小さな切れ込みを入れてもらった。
遠目にはほとんど分からないが、
切符切りでパチンと切ったような形だ。
桜の花びらのようにも見えることから
この印を持つ猫は
《さくらねこ》
と呼ばれている。
『飼い主はいません。
子は産みませんので、
地域のみなさんで可愛がってやってください』
そういう印だ。
チビたんとブチさんは、
この界隈で初の『地域猫』になった。
ただし、どこからも補助は出ていない。
お財布が痛かった。
☆☆☆
キジ白、サバ、ハチワレ、黒が二匹。
子猫はあと五匹。
お母さんと引き離されて、寂しがるかと思ったけれど。
取り越し苦労だったようだ。
ノラ生まれの子猫たちはたくましかった。
そして、ダイちゃんは面倒見がよかった。
母猫のやり方を真似ているのかもしれない。
ダイちゃんには、自分のお母さんの記憶はあるのだろうか。
しかし、こうやってずらっと並んでいるのを見ると、
だれもダイちゃんに似ていない。
【back number】
**おまけ・本日のダイちゃん**
花を撮ろうとしてカメラをパシャパシャさせていたら、
にゃーにゃー催促されました。
^・△・^n こっちも撮るの。
デルモ気取りか…(ー_ー ;
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《商品リンク》よろしければ、休日のおともに。