春の月風の日。
朝、いつもの人間が来た。ご飯くれ。
雨が降っているから毛皮が濡れてしまった。
自分でもお手入れしたけど、背中が拭けていなかったようでゴシゴシされる。
ご飯を食べている途中、いつも顔をゴシゴシされる。
うっとうしいけど、ゴシゴシされたあとは目がすっきりするのでがまんする。
今日はしっぽの先までゴシゴシされた。いくらなんでもこれはメーワク。
逃げる。ご飯、まだ途中だけど。
パトロールをしていたら、後ろから『ダイちゃん』と呼ばれた。
あの人間だ。ついてきたらしい。もの好きだな。
ちょっと待ってやるか。
パトロールを中断して、人間の相手をする。
ナワバリを全部知られるのも、あまりうれしくないし。
人間が勝手に話をするので、てきとうに返事をする。
草の上にゴロンとしたら、パシャパシャされた。
『フォトジェニックだねえ』と言われた。なんのことやら。
ご飯が途中だったことを思い出す。
人間が『小さいカリカリがあるよ』と言っている。
カリカリ。
人間と一緒に帰る。
人間の肩に登って、来た道を戻る。
高いところから見るナワバリは、いつもと違って見える。
風が強い。人間が、落っことさないようギューっとしてくる。
あったかい。
お腹いっぱいになった。
パトロールを最初からやり直す。
あの人間は、いたりいなかったりする。他の人間はいつもいるのに。
たぶん、別のナワバリから来ているんだろう。
いなくてもご飯は置いてある。けど、いてもいいと思う。
おしまい n^・ω・^n