2019年。猛暑の夏。
猫も熱中症になるという話を聞いた。
助からないこともある、と。
人間と同じだ。
猫は人間よりずっと小さい。
だから水分量も少ない。
体内から失われた水分量が少なくても、もともとの量が少ないのだから
危険度は高いかもしれない。
急に心配になる。
猫たちよ。
いきなりパタンと寝るのは、勘弁してほしい。
日当たりの良いところで昼寝するのも、やめてほしい。
妹の知人の飼い猫も熱中症になった。
点滴をしてもらって、一命を取り留めたらしい。
「クーラーをつけてやって」
と、妹からメールが届いた。
離れ屋で、クーラーがあるのはここしかない。
仏間への立ち入りが
全面的に解禁となった。
クーラーを嫌う猫もいると聞いたが、
猫たちは何の抵抗もなく、新しい場所に飛び込んだ。
仏間には高さの違う棚があって、
隙間がたくさんある。
猫は、狭い場所と高い場所が大好きだ。
つるつるの経机は、ひんやりとして気持ちいい。
子猫たち全員が、おりんを鳴らし、
全員が仏壇の入り心地を確かめた。
もうすぐお盆がやってくる。
ご先祖も退屈しなくて、いいだろう。
子猫たちが無体なことをしても、
御仏はお許しになり、温かい目で見守ってくださるはずだ。
畳が猫の爪でケバケバになる?
全く気にならない。
この離れ屋が建ってから、畳を替えた記憶がない。
はしゃぐ猫たち。
そして、猫より先に私が倒れた。
農道整備に参加しているときだった。
いっしょに作業をしていた方々が、
ぐったりと横たわる私を心配そうに覗き込んでいる。
この集落では、熱中症で救急車を呼ぶことはない。
農業に関わる人たちは、引き時を知っている。
なにより、基礎体力が違う。
「猫ちゃんが心配しとるよ」
誰かの声が降ってきた。
ダイちゃんが離れ屋の玄関前からこちらを見ているらしい。
人がたくさんいるので、近づくことができないのだろう。
みなさま、申し訳ありません。
自分の体力のなさを甘く見ていました。
私に何かあったら、猫たちの生活が立ちゆかなくなる。
ダイちゃんごめん。
これから十分気をつける。
暑さが収まるまで、いっしょに涼しいところでゴロゴロしよう。
☆☆☆
8月5日。
「はっちを引き取りたい」という連絡が入った。
『きんめ』を家族に迎え入れてくれた方からだった。
最近では多頭飼いが主流なのだろうか。
最初に白い子猫たちの里親さんになってくださった方も、二匹一緒に迎えてくださった。
『子猫が寂しい思いをしたら、かわいそう』という理由だった。
そういうご配慮は、手放す側としても嬉しい。ありがたい。
インターネットで里親を募集するサイトもある。
勧めてくれた方もいたが、利用しなかった。
詐欺に引っかかるのが怖かった。
人のつてに頼って、四匹の子猫たちが家族を手に入れた。
長かった。
あとに残された三匹が、ここで幸せに暮らせるかどうか。
それは、ダイちゃんと私次第だ。
☆☆☆
「お外に行こう」と、ダイちゃんが言う。
「涼しくなったらね」と、私が答える。
「お外に行こう」と、ダイちゃんが誘う。
「雨が止んだらね」と、私は答える。
夏の間は、生活が猫で占められていた。
庭も畑も荒れ放題。
少々、いや、かなり億劫だ。
「いっしょにお外に行こう」
ダイちゃんがねだる。
仕方ないなあ。
☆☆☆
朝、
だいだい色の猫が出迎えてくれる。
私の一日が始まる。
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